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肺炎:それはかなりありふれた病気。しかし、日本人の死因第4位なのだ!

2021/09/05
 
海で深呼吸
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肺炎の最も多い原因となる肺炎球菌についてかいつまんで解説

両肺のイメージ画像
年齢がいくと非喫煙者でも煤けてくる。

肺炎球菌感染症(pneumococcal infection)

肺炎球菌とは、市中肺炎と医療・介護関連肺炎の主たる原因菌(グラム陽性双球菌)である。菌表層に90種類以上の莢膜ポリサッカライド✿が存在し、血清型を決定する抗原となっている。

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莢膜ポリサッカライド:カプセル状の多糖体。

また菌血症、髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こし、劇症型の病態となることもある。
IPDは5類感染症(全数把握対象)であるため、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所へ届け出ることが義務付けられている。検体(痰)のグラム染色や、迅速抗原検査で診断される。

◆病態

細菌性肺炎の最大の原因菌であり、インフルエンザ罹患後の続発性肺炎の原因として最も重要である。
また、細菌性中耳炎や副鼻腔炎の原因にもなる。

鼻咽頭粘膜に感染、無症候性に定着する。健常人での保菌率は成人で5〜10%、小児では20〜40%もある。保菌が肺炎球菌感染症の発症と水平伝播に重要な役割を果たす。
特に小児の保菌は、水平伝播により高齢者の肺炎発症に繋がる可能性がある。3世代同居は要注意!である。

◆診断

臨床検体(喀痰、髄液、耳鼻科領域の検体、血液など)のグラム染色で、グラム陽性双球菌を確認することにより肺炎球菌であることが推定される。加えて細菌培養を行い、菌を分離・同定することで確定診断となる。
グラム染色の感度は80%以上、特異度は90%以上と非常に高いが、診療の現場ですみやかに実施できる施設は限られる。

これらの検体から、肺炎球菌の特異的な抗原物質をイムノクロマト法を用いて30分以内に検出できる迅速抗原検査キットとして、「ラピラン肺炎球菌」と「BinaxNOW肺炎球菌」の2種類がある。簡便で有用性が高い。

検体の種類によって使い分けが必要であり、「ラピラン肺炎球菌」は喀痰、上咽頭ぬぐい液、あるいは中耳貯留液・耳漏が使用できる。一方「BinaxNOW肺炎球菌」は、尿、あるいは髄液を用いる。
感度は「ラピラン肺炎球菌」のほうが高く、特異度は「BinaxNOW肺炎球菌」のほうが高い。
ただし、「BinaxNOW肺炎球菌」による尿中抗原検査は、肺炎治癒後でも数週〜数カ月間陽性が持続することがあるので、注意を要する。

中等症以上の肺炎や髄膜炎では、菌血症✿の合併頻度が高いため、血液培養も重要。特に、髄膜炎が疑われる場合には、必ず血液培養が実施される。

✿菌血症:血中に細菌が存在する症状。カテーテル留置や歯茎からの出血などからも起きる。

グラム染色(染まるのを陽性菌という)

  • 染まるもの:肺炎球菌、インフルエンザ、モラキセラなど。
  • 染まらないもの:マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラなど。β-ラクタム系は効かない。
    染色の感度、特異度は経験がものをいう。うまく染まると嬉しい。

ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae)

ペニシリン耐性とは、細菌の外膜層を構成するペプチドグリカンの生合成に関与するペニシリン結合タンパク(PBP:penicillin-binding protein)の変異によるペニシリンとの親和性が低下した状態をいう。
ペニシリンの投与量を増やすことで髄膜炎以外の肺炎球菌感染症は治療可能となる。

ペニシリンに対する耐性度により、ペニシリン低感受性菌(PISP)とペニシリン感受性菌(PSSP)に分類される。
ペニシリンGの最小発育阻止濃度(MIC)(μg/mL)を用いて鑑別される。

◆予防

基礎疾患を有する成人や高齢者に対しては、肺炎球菌ワクチンによる予防が推奨されている。肺炎球菌ワクチンには、23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)と13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の2種類があり、PPSV23とPCV13の併用はより高い予防効果が期待できる。

◆治療方針

髄膜炎以外の肺炎球菌感染症の治療は、ペニシリン系抗菌薬の高用量投与を原則とする。

薬剤感受性試験の結果が判明するまでは、PRSPである可能性を考慮した抗菌薬の選択を行う。
耐性菌選択防止の観点から、ペニシリン系抗菌薬の高用量投与が基本となる。
PRSPに対して、β-ラクタマーゼ阻害薬は無効であるため、同阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬を使用する意義はない。

髄膜炎の場合、抗菌薬の移行が血液脳関門(BBB)により阻害されるため、PRSPによる髄膜炎の場合にはペニシリン系抗菌薬の高用量投与でも効果不十分で、感受性が判明するまでは、セファロスポリン系抗菌薬のセフトリアキソン(ロセフィン)とバンコマイシン(これ最強)の併用が選択される。

一方髄膜炎以外ではPRSPが原因菌であってもペニシリン系抗菌薬の高用量投与で治療可能である。
ただし、肺炎球菌以外の原因菌による感染が除外できない場合や混合感染を疑う場合と、アレルギーなどによりペニシリン系抗菌薬が使用できない場合では、セフェム系抗菌薬やレスピラトリーキノロン、カルバペネム系抗菌薬を必要に応じて適宜選択することになる。

また重症以上の肺炎の場合はマクロライド系抗菌薬の併用がなされる。
投与期間は、肺炎の場合では約1週間、IPDの場合は2週間を目安として、症状、血液検査所見、呼吸状態、画像所見などの改善の程度を総合的に判断、決定される。

肺炎、慢性下気道感染症の急性増悪、中耳炎や副鼻腔炎になったとき

肺炎と診断された症例の重症度の評価には、日本呼吸器学会の「成人肺炎診療ガイドライン2017」のA-DROPシステム(表)が推奨される。

  • 軽症例(外来):アモキシシリン(サワシリン)カプセルの高用量内服を原則とする。クラビット錠、ジェニナック錠も投与されることがある。
  • 中等症(入院):ビクシリンの点滴静注、ペニシリンアレルギーの方にはロセフィン静注用。
  • 中等症(外来):入院治療が困難な場合は、1日1回投与で有効な薬剤を選択する。
  • 重症(集中治療室):上記の他、重症市中肺炎においてはマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)の併用療法により予後の改善が期待できる。
  • IPDで髄膜炎の場合

肺炎球菌による髄膜炎の場合は、抗菌薬と副腎ステロイド薬の併用により、後遺症や死亡率の減少効果が認められている。ただし、頭部外傷や外科侵襲に併発した場合は投与しない。

◆予防

何はともあれ肺炎球菌ワクチンで予防が可能であり、高齢者や免疫能低下症例では、接種が推奨される。
肺炎球菌ワクチンとして、23価肺炎球菌多糖体ワクチン(ニューモバックス;PPSV23)と13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13;PCV13)の2種類がある。
PPSV23は、血清型をより広範囲にカバーできる点、一方PCV13は、より高い免疫効果が期待できる点で優れている。

PPSV23は、2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患するリスクの高い者で、かつ脾摘患者に限り保険適用となる。脾摘患者は、IPDのハイリスクであるため、肺炎球菌ワクチン接種がきわめて重要である。
またPPSV23は、2014年10月に定期接種化され、接種対象者は次のようになっている。
①65歳の者(経過措置終了後の2019年度より実施)。
②60歳以上65歳未満の者であって、心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有する者。

詳しくは厚労省へ→ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html

5年ごとに再接種を勧める。

一方、PCV13は、小児のみを対象として接種されてきたが(定期接種)、2014年6月に65歳以上の高齢者へ適用が拡大された(任意接種)。

アメリカでは65歳以上の高齢者に対して、PPSV23とPCV13の併用を勧めているが、日本では、定期接種制度によるPPSV23の接種をまず念頭におきつつ、PCV13との連続接種も可能な範囲で検討すべき選択肢とする。
またインフルエンザワクチンの併用は、肺炎による入院や死亡も減少させるため、積極的にインフルエンザワクチン接種も推奨すべきである。

◆専門医へのコンサルト

IPD症例や急激に悪化する症例、呼吸不全を伴う肺炎症例、重篤な合併症を有する場合、これまで多種類の抗菌薬に対して副作用の既往(β-ラクタム系抗菌薬アレルギーなど)がある場合は専門医へ紹介、もしくはコンサルトを行う。

◆患者さん側の注意事項

適切な抗菌薬による治療で通常は治癒に至るが、重症化し生命にかかわる場合があるため、軽症以外は入院を原則とすることを理解。

外来治療の場合は、呼吸困難、意識障害などの新たな症状が出現した際には、直ちに受診する。
肺炎球菌ワクチンによる予防が可能であることを理解し、接種を受ける。自治体の補助がある。
23価ワクチン(ニューモバックス)は自己負担4,000円である。住民税非課税者、生活保護の方は無料だそうだ。
5歳刻みで5年に一度受けることになっているが、ワクチンの効果のためか費用対効果のためかはちょっと怪しい。

◆看護・介護の注意点

家庭内や施設内で、肺炎患者と濃厚な接触があると飛沫感染により急性発症することがあるため、マスクなどでの飛沫予防や手指(しゅし)衛生に努める。手袋を過信してはいけない。見えないピンホールがある場合があるからである。外してからの手洗いは怠けない方がよい。
誤嚥の関与が疑われる場合は、嚥下訓練や口腔ケアを行う。

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